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執筆者の写真yusuke murakami

シムシャール・パミール①  Shimshal Pamir (パキスタン)

■パキスタン辺境でのトレッキング記録(2013年)


出発地 シムシャール村

目的地 シムシャール・パミール(最終地点シューウェルト)

総距離 83km


シムシャール村はパキスタン北部ゴジャール地方の辺境に位置している

バックパッカーがよく訪れるフンザから北へ40km行くとパスー村があり、そこからジープで東に3時間半ほど行くとシムシャール村に到達する。


補足説明

・フンザ→パスー

道路の一部が地滑りでできた巨大湖に水没しているため、ボートを使う必要がある

2015年に道が復旧したらしい














       世界屈指の山岳地帯で交通手段の1つがまさかのボート


・パスー→シムシャール村(55km)

2005年に道路開通。

道ができるまで地元の人はこの間を3日かけて命がけで歩いていたそう














         シムシャール村近くの氷河で行き詰るジープ


シムシャール村

1986年まで外部の人間禁制の村

言語はアフガニスタンのワハン回廊や一部タジキスタンと同じワヒ語。

ウルドゥー語も通じる。

村にはパキスタンの8000m峰登頂者が20人以上いる

ガイドのシムシャール人は確かに屈強な人だった


■トレッキング開始

メンバー3人(ガイド、バックパッカー2人)


シムシャール村→パス・フルジーン

村の湧き水が飲める場所で水分補給

シムシャールの川床に沿った広大で平坦な道を歩いて行く


















ガイドのワディム。めちゃくちゃ無口だが35kgの荷物を背負いスタスタ歩いて行く



吊り橋を渡り、シムシャール川とパミール・エ・タン川の合流地点まで2時間ほど

再度、吊り橋を渡り、1時間半ほど登ってガレ・エ・サール

ここから南を見るとヤズギル氷河が見渡せる。



      ヤズギル氷河を背にシムシャールの最奥部へ入っていく



周りの景色もすごいが道がとにかく圧巻。ネパールのように観光地化されていないので、目印になるものや看板等が一切ない。地元民と少数のトレッカーたちだけでかろうじて踏み固められた道のみで1年以上誰も通らないと風化して道そのものが消えてなくなりそうだ。

「こりゃガイドなしだと道を見失って野垂れ死にするかな」と最初はガイドなしでも行けるやろと軽く考えてた自分が見当違いだったことを反省する。


          

             足を踏み外すと奈落の底へ




「玄奘三蔵が歩いていた頃のシルクロードもこんな感じだったのだろうか」と感慨に耽りながら歩く。まるでチベットの僧侶になったような気分である。



6時間ほど歩いてパス・フルジーン(小屋)に到着

ガイドが薪を取ってきてくれチャパティを焼いてくれる

どこで薪を取ってきたのかと思うほど周囲に何もない荒涼とした場所である

夜はネズミが餌を求め、躍動し頭の上に落ちてくる


・パス・フルジーン→ウーチ・フルジーン

最初から少し登り、その後、川底を見下ろしながら崖沿いの小道でアップダウンを繰り返す。

一体誰がどんな理由でこんな辺境の地を開拓したのかと想像を膨らませてしまう。

先人たちが何世代にもわたって少しずつ行動範囲を広げていった歴史の積み重ねがこの道を作ったことは間違いないが、色々創造力を搔き立てられる道中である。


「本当の偉人というのは教科書には載らない、偉業を成し遂げた名もなき人たちなのだろう」と人間の未知への探求心と偉大な勇気に感銘を受けながら歩く。



    本当に危険な場所は要所要所に石ころで道を補強してくれている



ちなみにもう1人のトレッカーは中国系オーストラリア人のバックパッカーで少しウルドゥー語が話せるので時々必要なことは通訳してくれる。

カリマバードで出会い、お互い「辺境」を求め意気投合し、今に至る。


川の対岸を見ると、風化によってできた岩の塔がアフガニスタンのバーミヤンを思い起こさせる。中国の奇岩地帯では「土林」と呼ばれるものだ。






















2~3時間登り続けると木を捻じ曲げて作られた螺旋階段が現れる。この地域で木材は貴重なはずだが階段に使っても大丈夫なんだろうか?薪が必要になったらここから取っていくのかな。





階段を上ると石門があり、それを潜ると広大な放牧地が広がっていてヤクが何頭も放し飼いにされている。そして、その背後には雪山という見事な風景。ここで昼食を取る。

途中で羊飼いのシムシャール人が小屋に入ってきてワディム(ガイド)と談笑。





昼食後も左右にカラコルムの無名峰に挟まれながら荒涼とした絶景の中をアップダウンを繰り返しながら歩いて行く。普通の山なら歩き続けると疲れがたまっていくのがわかるが、ヒマラヤやカラコルムの風景は疲れを忘れさせてくれる陶酔作用があるようだ。写真を撮りまくりながら歩いていても、あまり疲れない。10m歩くごとに驚きと歓喜を感じる。

日本で鬱病や何もやる気が起きない人はヒマラヤやカラコルムを歩くだけでだいぶ改善するに違いない。ここにはSNSもないし、アイドルや芸人もいない。

自然環境は厳しいけど、助け合う人間関係があるし、暮らしている人の眼差しは鋭くも慈愛に満ちている。軽くて、受けがいい言葉が乱用されている日本とは違って、必要なこと以外多くを語らないマウナ(沈黙)の重みがまだ隠然たる力を持っている場所だ。

シムシャール人の顔つきも山容と重なって見える時がある。ネパール・ヒマラヤは森林が多いゆえに暮らしやすい分、人々の表情は柔和だが、パキスタン・カラコルムは砂漠の民と同様、目の鋭さ、体つき、内に秘めるパワーが日本人やネパール人とはだいぶ異なるように見える。


そんなどうでもいいようなことを考えながら歩いているとこの日の宿泊地の小屋に到着。









          断崖絶壁の下にある小屋に泊まる



  






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